Clubhouse、Substack、Twitchなどの新しいメディア・プラットフォームがもたらす既存ニュースメディアのバイパスの可能性

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Photo by William Krause on Unsplash

ここ最近Clubhouseが話題です。国内では著名人、経営者、政治家、芸能人、お笑い芸人等も積極的に利用して、ブランド獲得、ビジネス活用、ただ単純に面白いから等の理由から、寝不足覚悟でサービスを楽しんでいる熱狂が伝わってきます。

海外に目を向けるとテスラCEOのイーロン・マスク氏がClubhouseに登場して、今更に話題となっている米新興ネット証券アプリのロビンフッドのCEOに質問をする、なんてことが起きているようです。で、そのClubhouse内での会話内容を元にした記事が執筆される、ということも今後当然起きていくことと思います。

そんな状況に対して、The Information 編集長のJessica Leesin(ジェシカ・レッシン)氏が警鐘を鳴らしています。その背景にはテック業界に対して厳しい姿勢で報道しているジャーナリストに対し、起業家、ベンチャーキャピタリスト、政治家等が取材やアクセスを制限し、既存メディアが「バイパス」される懸念があるからです。

Clubhouse、そして個人が簡単に有料ニュースレターを発行出来るサービスのSubstackに対して投資をしているベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)の共同創業者のマーク・アンドリーセン氏は、多くのジャーナリストをツイッターでブロックしたり、Clubhouseから除外したり、近年大手メディアの取材に応じてないことでも知られています。また、先日の報道にあったように、アンドリーセン・ホロウィッツがジャーナリストを採用して独自のメディアを立ち上げる計画があることも懸念事項として挙げられています。

政治、金融など、ありとあらゆる業界、社会に影響力を及ぼすようになったテック業界にはしかるべき説明責任や透明性を持つべきという考え方がある一方で、自分の組織や出資先の企業に都合の悪いことは触れない可能性もありうる民間企業が運営する「メディア」の存在感が高まっていることは、既存メディア、ジャーナリストにとっての脅威といえます。

SNS上で高い知名度を誇っている米国民主党の下院議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏(AOC)は、Twitch やInstagram Liveなどのライブストリーミング配信プラットフォームを利用することで何万人、何十万に、既存メディアを介さず直接語りかけることが出来る影響力を持っています。Twitch上で102万人のフォロワーを持つコルテス氏は1月29日の「GME(ゲームストップ) and Retail Trading」と題したライブ配信を行い「ゲームストップ騒動」について個人投資家の売買停止措置をとった投資アプリロビンフッドの対応を「許せない」と主張したり、カルフォルニア州知事選が噂されている元Facebook幹部のChamath Palihapitiyaに直接インタビューを実施する等、今までは簡単に実現しなさそうな組み合わせの報道価値があると思われる一次情報の発信を積極的に行ってます。

トランプ前大統領程がTwitterを利用することで既存メディアを「国民の敵」としてバイパスしていたように、著名人による「マスメディアのバイパス」が今後いろいろな場面で広がるのではないかという視点、今後も注意してみていきたいと思います。

102万人のフォロワーを持つ米国民主党の下院議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)のTwitch配信「GME(ゲームストップ) and Retail Trading」(2021/1/29)

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市川裕康/ ichi /media consultant passionate with #climatechange | #気候変動 #クライメートテック 関連調査・コンサルテイング https://bit.ly/climatecuration